株式会社光和コンピューターは、書店向けの店舗システムおよびPOSシステムで約1000書店、出版社基幹システムで350社以上に導入実績があり、書店、出版社へ向けてさまざまなITソリューションを提供している業界大手だ。ポイントアプリやAIによる返品・仕入システムとの連動、セルフレジなどの非対面、無人営業への対応、Web上での在庫公開や文具雑貨を含めた原価管理など、さまざまなシステムやサービスを提供し、書店のDX化を大きく支援している。
ポイントアプリで売上増効果実証
同社が山陰地方で書店を展開する株式会社今井書店と、「PockePay(ポケペイ)」を提供するポケットチェンジと共同開発したポイントアプリ「BookStore」は、POSシステムと連動してポイントの付与やEC、店舗の在庫確認、顧客ランク管理、キャンペーン情報のプッシュ配信などができる。

セルフレジの利用者にアプリの利用方法を教えるスタッフ(米子市・今井書店錦町店)
昨年4月から今井書店が同アプリの運用を開始。会員登録後すぐに購入する顧客とそうでない顧客で、半年間に客単価で11.6%の差があったため、2024年11月から会員登録後にアプリ利用(購入)がない顧客に、毎月初回限定10倍クーポンを配信したところ、配信開始以降、新規購入転換率が大きく回復。会員登録月に購入した顧客はその後の利用も多い。
同アプリは顧客ごとの購入金額に合わせたクーポン券の発券や書店専用のポイント付与が可能なため、自店の顧客データの分析をもとに販促や情報提供に生かせるなどの利点があり、2月末でアプリは10万ダウンロードを達成、会員登録数も9万人を超えた。25年の1月からは新サービスとして、アプリ上で在庫検索による店舗受け取りや、新刊図書の予約・購入ができるようになった。
その後、ECの売上増加を目的に平日にもクーポン施策を実施。店舗での平日施策は来店が難しい顧客が多いこともあり土日に比べて伸び悩む傾向にあったが、ECは157%増の大幅な伸びがみられ、月のEC売上増加に大きく寄与した。
さらに、同アプリは個別に各種設定ができるほか、キャンペーンやコンテンツ配信も法人・個店毎に行うことができることから、他の書店での活用も可能。今後、光和コンピューターでは、多くの書店ヘの横展開を予定している。
AI仕入・返品で商品消化率アップ
同書店がAI事業会社の株式会社ACESと共同開発した「BOOKS-TECH.COM」は、AIによる仕入・返品をサポートする書店MDシステムだ。
同システムを活用することによって、個店別の販売傾向を分析し、何冊仕入れれば売上が最大化するのか、補充注文すべき冊数を提示してスタッフの判断で発注することができる。

書店MDシステムの推奨返品分析画面
23年から今井書店学園通り店でシステムの実証実験を開始し、翌年には全14店舗で実稼働を開始した。まずコミックスの2巻目以降とビジネス書、文庫、新書など主要銘柄で稼働したところ、AIが各店舗の売上傾向を分析し、補充注文すべき冊数を推奨した銘柄については、随時補充を行ったことから半年間での消化率が72%に達し、在庫回転率がアップ。未稼働店の消化率50%を大きく上回る結果となった。
本部、店舗ともにシステム画面で推奨返品分析、推奨入荷分析などを確認することができるため、システムが提案する優先度や推奨をみながら店舗スタッフが判断することも可能だ。特にビジネス書や新書など回転が速いものに関して、より精緻な予測をして最適化ができるという。
返品は、同社の書店店舗管理ASPシステム「BookAnswerⅣ」と連携し、入荷・在庫・販売などのデータから店舗ごとの最適な在庫を割り出し、優先順位を付けた不稼働在庫のリストに沿って抜き取る形の返品作業を行う。在庫を最適化することで結果として返品量が減り、商品知識などがなくても返品作業ができることから、現場からも作業が楽になったとの声が上がっている。また、返品作業時に返品対象商品の位置が特定できるシステムによって返品作業全体の業務効率が上がり、売上増加、回転率の向上にも影響を与えているという。
Web在庫公開・文具・雑貨原価管理システムも提供開始
同社は「BookAnswerⅣ」についてPOSシステムと連動し、毎日の売上や商品管理、販売分析など、すべての書店管理業務をカバーする機能に加え、オプションとして「Web在庫公開システム」と「原価管理システム」も開発・提供している。
「Web在庫公開システム」は、一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)の書店在庫情報と連携したもので、現在、今井書店やくまざわ書店(東京)が実証実験に参加。各店舗の店頭在庫の公開に加えて、店舗での書籍の取り置きサービスも可能。利用者がネットの検索エンジンで欲しい本を検索すると、位置情報から近くの店舗の在庫が表示され取り置きしてすぐに購入できることから、利用者が書店に足を運ぶ機会を増やしている。
「原価管理システム」は、売上拡大、利益改善のために取り扱いが増えてきた文具や雑貨など、書籍雑誌以外の商品の原価を登録して、利益管理や適切な在庫・仕入管理を可能にしている。
POS・セルフレジ導入で人件費抑制、人手不足解消
同社はPOSレジ「KPOS」や廉価版の「KPOSmini」を提供しており、大手取次の日本出版販売(日販)が取引先向けに提案するPOSシステムにも採用され、導入書店は110法人930台に達する。これまでにくまざわ書店、今井書店、ブックボート(神奈川)、啓文社(広島)、喜久屋書店(兵庫)、カメヤ宇土シティ店(熊本)、宮脇書店越谷店(埼玉)、青山ブックセンター(東京)など、全国各地で規模の大小にかかわらず多くの導入事例がある。

無人店舗「ほんたす ためいけ」のセルフレジ
さらに近年導入が進むセルフレジを書店業界でいち早く開発。導入効果として、大規模店舗では7~8人で運用していたレジ専任者を削減することができ、小規模店では業務のワンオペレーション化が実現するなど、人件費抑制や人手不足解消などを行うことができた。
同社のセルフレジを利用して無人営業を行っている日販の「ほんたすためいけ溜池山王メトロピア店」のように、LINEアプリによるデジタル会員証での入店管理や、キャッシュレスセルフレジ、ライブカメラによる遠隔接客など最新のテクノロジーで営業時間中は完全に無人で運営している例も挙げられる。スマートレシートに対応しているため、ワンオペ時や無人営業時にレシート用紙が切れるリスクをなくすことが可能だ。
多様なキャッシュレス、ポイント、図書カードにも対応が可能
キャッシュレス対応では、クレジットカード、電子マネー、交通系、バーコードなど、ほとんどの決済手段に対応し、図書カードリーダーとの接続も可能。書店の独自ポイントとも連携でき、共通ポイントの楽天ポイントについては、POSと連動した運用が可能になった。さらに、ブックカバーや袋などを置く棚も備えた木製什器と金属製什器も提供。
同社は今後、ポイントアプリ、AI仕入、返品最新システム等を各書店に提供することで、さらなる書店へのトータルサポートを展開していく。
株式会社光和コンピューター
代表者:寺川光男
所在地:〒101-0032 東京都千代田区岩本町3-1-2 岩本町東洋ビル5階
【問い合わせ先】メール:ml_csol@kowa-com.co.jp
電話:03-3865-1982(担当:香川)
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