第28回光文三賞 贈呈式 日本ミステリー文学大賞 東野圭吾さんが受賞

2025年3月24日

 光文文化財団は3月18日、第28回光文三賞の贈呈式を東京都内のホテルで開催した。日本ミステリー文学大賞には作家の東野圭吾さんが、日本ミステリー文学大賞新人賞には作家の衣刀(いとう)信吾さんが、鶴屋南北戯曲賞には劇作家で俳優の古川健さんがそれぞれ選ばれ、正賞と副賞が贈られた。

 

左から衣刀さん、東野さん、古川さん

 

 冒頭、光文文化財団理事長で光文社・巴一寿社長があいさつ。「私たちをとりまく社会は変化の速度を増してきた。世界的な紛争や自然災害の頻発といった負の大きな変化がある一方で、生成AIなどデジタル技術の急速な進化により、私たちの暮らしも否応なく変わり始めている」と語り、「こんな先行きが不透明で複雑な時代だからこそ、私たちは時代と向き合うための文化の基軸を大切に育んでいく必要があると考える」と賞の意義を強調した。

 

 日本ミステリー文学大賞に選ばれた東野さんは、1985年のデビュー以来、幅広い作風で数々のヒット作、ヒットシリーズを生み出し、2023年には国内累計発行部数が1億部を突破。日本だけでなくアジア圏や米英など国際的にも高い評価を受け、現代ミステリー界の顔といっても過言ではない活躍をしていることが評価された。

 

 あいさつした東野さんは、「一昨年まで9年間この賞の選考委員をしていたが、選考はとても楽しかった。実績のある作家の方たちの名前が並び、華やかな経歴について選考委員みんなで語り合う。思い出話にも花を咲かせる。そうやって授賞者を選んでいる中で、自分の経歴に重ね合わせて、ミステリーはいいものだと、ひしひしと思うのが楽しかった」と振り返り、「この業界に入って今年で40年になるが、今回の選考委員の皆さんも私の40年間をさらっと振り返り、合わせてご自身の功績も振り返り、楽しい思い出に浸れたならば、それが一番うれしい」と笑顔で語った。

 

 新人賞の衣刀さんは現役の弁護士で、受賞作『午前零時の評議室』はリーガルサスペンスと本格ミステリーの面白さにあふれた作品。今後も自身の経歴を生かされたジャンル、さらにはその枠を超えた幅広いフィールドで魅力的な作品を生み出すことが期待される。

 

 衣刀さんは「コロナ禍で初めて短編小説を書き始め、長編を書いてみようと思ったのが2021年ごろだった。過去2作も候補にしてもらったが、選考委員からの選評で欠点をたくさん指摘していただけた。それによって腕を磨くことができた」と感謝したうえで、「最終候補が続く中、今回は日本弁護士連合会の副会長に就任することも決まっていたので、(忙しくなる前の)1月には初稿を完成させ、5月の応募締切までに徹底的に推敲した。受賞後も信じられない日々だったが、本になってようやく実感がわいた。今後も読者がはっと驚く、新しい物語を紡いでいきたい」と喜びを語った。