丸善ジュンク堂書店は4月9日、虎ノ門ヒルズ グラスロック(東京・港区)内に「magmabooks」を開業した。グラスロックは、「森タワー」「ステーションタワー」などに続いて虎ノ門ヒルズエリアに新しく誕生した地上4階、地下3階立ての施設で、「TULLY’S COFFEE & TEA」や「ROSE GALLERY」など計7店舗から成る。

森をイメージした2階の書籍売り場。曲線の多いデザインにすることで、視覚情報を増やしている
magmabooksは2階85坪、3階185坪で営業。書籍在庫数は約8万冊。これまでの書店の役割である「本を販売する場所」という枠を超え、「読前・読中・読後まで知的興奮と創造性を提供する」というコンセプトの新業態書店となっている。
2階は「知の森」と称した、「本を探す」のではなく「本と出会う」ための空間。過去・現在・未来のエリアに分かれており、例えば過去エリアでは「戦争と私」「祈りと宗教」、現在エリアでは「都市と地球と私たち」「家と家族と私」といったテーマがいくつも掲示され、各テーマに沿って選書された本が並ぶ仕様だ。

さまざまなテーマがフラッグで掲示されている
専門書、コミック、図鑑などジャンルの垣根を超えて選書されており、視野を広げながら本との出会いを楽しめる。書棚に整然と並べるのではなく、棚差しした本の前に面陳や平置きで積み上げるなど、奥行きのある陳列も特徴的。経営企画部部長の工藤淳也さんは、「未知の本と出会えるよう、人間の認知に少しでも引っかかる“でこぼこ感”を大切にした陳列方法にしている」と話す。
また、店内には「地球は何かの実験台なのか?」「私達はなぜ、植物を見ると癒やされるのだろう?」といった問いが記されたカードが設置されており、回答となる本を求めて散策する「問い散歩」という仕掛けも新しい。

“でこぼこ感”を大切にした陳列
3階は一般書、雑誌、コミック、児童書などオールジャンルをそろえる書籍売り場。虎ノ門という立地を意識し、ビジネスとコンピューターのジャンルに特に力を入れている。

奥に「何があるのだろう」と好奇心をくすぐるアールの棚
そして、書籍売り場に隣接する「magmalounge」は「インプットからアウトプットまでできる空間」がコンセプトの有料コワーキングスペース。「FOCUS」と「CALM」という2つの空間から成る。FOCUSは、脳波に好影響を与えるニューロミュージックや目の疲れを軽減するOLED照明(有機EL照明)を採用した空間で、集中力を向上させ、読書や作業に没入できるよう設計。CALMは、サウンドビオトープシステムにより滴り落ちる水音を部屋全体に響かせ、照明を抑えた落ち着いた雰囲気で、集中から解放され思考を緩和するための空間になっている。

集中のための空間「FOCUS」は半個室(左)が30席、個室(右上)が6席。フリードリンク(右下)、フリーWi-Fi付き
「今までの書店は“売る”ことだけが役割だったが、本を使えばもっといろいろなことができると考えている。未知の本と出会って自分の内から湧いてきたものを、集中できる空間で、新たな知や創造性に結びつけていただきたい」と工藤さんは話す。

平日はビジネスパーソンが主だが、週末はファミリーも多く訪れるため児童書も充実している

2階奥のギャラリースペース。6月1日まで、ロックバンド「SUPER BEAVER」の『あなたと生きる「ことば」たち』を開催中