【出版時評】本を広げるために書店は必要

2019年3月11日

中国では経済の減速が心配されているが、こと書籍市場については伸びているようだ。その背景に、若者が読書したり、本を持つことをカッコいいと感じるライフスタイルがあるという話を聞いた。

 

中国では書籍のネット通販や電子書籍配信が伸びるのと同時に、カフェを備えて、これが書店かと驚くような内装の新業態書店が次々に出店しているという。ネット通販なら何割引かで買える本を、あえてこうした書店で購入している若者も多い。

 

こうした新たな書店は、欧米の書店や、台湾の誠品書店、日本の蔦屋書店なども参考にしているのだろう。そしてこうした書店の存在が、本や読書をカッコいいと感じるライフスタイルを増幅しているのかもしれない。

 

日本でも、一般的な書店はどんどん減る中で、蔦屋書店や本屋B&B、Titleをはじめとした新業態書店は増えており、それなりに注目を集め、人々が訪れている。書籍のビジネスモデルの問題を置けば、魅力的な書店が人々を惹きつけるのは、中国などと変わらない。

 

誤解を恐れずにいえば、いまのネット書店は購入場所としては便利だが、訪問して本好きになったり、読書をカッコいいと思うようになるとは考えにくい。やはり本はイケていると感じられるライフスタイルを提案する場としての書店が、本の広がりには欠かせないのだ。

(星野渉)