【出版時評】プラットフォームを作れないのか?

2019年3月14日

公正取引委員会が大手ネット通販会社を調査するという。個人間取引でインフラになっているプラットフォーマーが、ポイントの還元などを一律に求めれば、影響力が大きいということだ。「GAFA」といわれる国際的な巨大プラットフォームへの対応は、各地で課題になっている。

 

出版業界におけるプラットフォームといえば、取次であろう。書籍・雑誌の配送はもちろん、決済、金融、情報流通など、出版物の取引・流通の基盤を担い、雑誌を中心とした流通網によって、きわめて低いコストでこの基盤を利用できる体制を築いてきた。

 

しかも、いきなり料率変更やポイント還元原資を求めたりしない。出版社にとっては、安心して利用できる公共サービスのような存在だった。

 

それは、戦後の主要取次が、当時の主な出版社の出資によって設立されたことに起因するのであろう。世界大戦で崩壊した日本の出版流通システムを、出版社自らが出資して共同で作ったプラットフォームが取次なのである。

 

ネット通販や電子出版では、出版社は外資を含めた外部のプラットフォームへの依存度を高めてきた。しかし、そうした依存先は、必ずしも出版事業に支えらてれていないので、同じ価値観を共有できるとは限らない。これから、出版する者が、自らプラットフォームを作るというのは、夢物語なのだろうか。

(星野渉)