【出版時評】出版社は再販制度を続けるのか

2019年2月11日

アマゾンジャパンが書籍を「買い切り」で仕入れるという発表が、大きなニュースになっている。買い取った商品を値引き販売するのではないかという点が、記者の琴線に触れたようだ。

 

同社は日本での事業開始当初から出版社との直接取引を拡大してきた。そのために所沢に流通センターを開設し、出版社の倉庫などから集荷する便まで出している。一昨年には取次が取り寄せる商品の発注を停止した。この取引で、「買い切り」条件の仕入を行うということだ。

 

出版社向けの事業説明会や、それに先だって開いた記者会見で、同社は自らの判断で値引きはできないと説明している。個別の直接取引契約に、再販売価格維持が盛り込まれているのかはわからないが、同社は「e宅販売」の契約に価格を維持する文言が入っていると説明している。

 

そうであるならば、アマゾンが値引きするのかどうかは、出版社の判断次第ということになる。もちろん、アマゾンに値引きを認めれば、他からの同様の求めにも応じなければならないだろう。

 

イギリスで100年間続いた再販制度「NBA」が1997年に崩壊したのは、大手チェーン書店の値引きキャンペーンに、大手出版社が参加し、他の出版社が追随したことがきっかけだった。再販制度を維持するもしないも、ひとえに出版社の意思にかかっている。

(星野渉)