今年も残すところ1カ月少々となった。今年も台風など多くの災害に見舞われた日本列島だが、出版業界も激震と言えるような大事件こそなかったように見えるものの、むしろ変化は確実に、これまで以上のスピードで進み始めたように思える。
河出書房新社は『スノーデン独白』を12月はじめに刊行するのに先立って、10月末に発売予告の新聞広告を掲出した。これまでも村上春樹の作品など大型企画を事前予告するケースはあったが、今回は今後予想される出版流通の変化を想定した試みでもあるという。
このことについて同社の小野寺優社長は、本来、書籍は書店の棚でじっくり売っていくべきだが、業界環境と将来を考えれば、映画のような事前プロモーションも「やむを得ない」と話した。
日本経済新聞出版社が刊行したジャレド・ダイアモンド『危機と人類』では、国家が危機を脱するためにとった「選択的変化」を事例をもとに示している。そして変化を選択するための要因として12項目を挙げている。
「危機にあるという世論の合意」「行動を起こすことへの責任」「解決が必要な問題を明確にする」「他の国々を問題解決の手本にする」「公正な自国評価」など。あとは読んでいただくとして、果たしてこの業界はいくつの要因をクリアしているのだろうか。
(星野渉)