日販調査による5月の書店店頭売上前年比は11%以上のプラスになった。学校の休校や外出自粛などで、学習参考書などの売れ行きが良かったことと、『鬼滅の刃』をはじめとしたコミックスが大きく伸びたためだ。
そんな中、地域別(支社別)で「特販」だけが大きなマイナスになった。大型商業施設に入居する大手チェーン書店が休業していたせいであろう。この頃、大人が店頭で長い巻数のコミックスをまとめ買いする姿が複数見られたという独立系書店からの報告もあり、生活圏にある「街の書店」に人々が集まったということだ。
そんな中で、ありがたくない人も集まってきたという話がある。万引きである。ある首都圏の駅前の書店で、4月頃から急激に万引き被害が増えたという。それほど広くない店内だが、高額商品に目を付けて、入店から数秒で持ち去られる。数人はカメラなどで特定したが、捕まえたのは一人だけだという。
その店の店主は、おそらく都心や郊外で大型店の休業が増えたせいで、そうした店で活動していた窃盗犯が街の書店にまわってきているのではないかとみている。入場制限せざるを得ないほどの来店者で混雑する店に目を付けたのかもしれない。その店では防犯を強化するため、新しいシステムを導入した。それもコロナ禍の影響のひとつだ。
【星野渉】