【出版時評】コロナ禍を経て新たな対話を

2020年11月2日

 10月21日に開かれた光和コンピューターの創立30周年記念シンポジウムは、会場とオンラインを併用したが、全体では300人を超える人々が聴講した。私にとっても久しぶりのリアル会場でのイベントだったが、緊張感を思い出した。

 

 パネリストは紀伊國屋書店の藤則幸男副社長、前日本書籍出版協会専務理事の中町英樹氏、メディアドゥの新名新副社長COO、光和コンピューターの寺川光男社長。多くの人がリアル書店の雄と成長著しいデジタルの新星との対決を期待したのか。

 

 確かに藤則副社長は「取次は本を運べなくなる、書店にお客さんが戻ってこない」一方で、電子を含めると本を売るプレイヤーが増え、しかも大資本のデジタル勢は成長著しく、勢力図が大きく変わりつつあると危機感を示した。

 

 巣ごもり需要で業績を伸ばしたメディアドゥの新名副社長は、ある大手出版社の今年4~6月の出荷額で、大手取次を抑えてメディアドゥがトップになったと明かした。

 

 ただ、藤則副社長はコロナ禍が書店のあり方を考える契機になったと述べ、自社が持つ人的な力を活かすバーチャル書店構想に言及。新名副社長は紙とデジタル両方の出版を支えていく必要性を指摘し、バーチャル書店への賛意も示した。コロナによる変化を経て、改めて企業や業態の枠を越えた対話を始める必要性を感じた。

【星野】