【出版時評】コロナ禍で出版市場は堅調

2020年11月23日

 大手取次の中間決算は、新型コロナウイルス感染拡大下での出版市場の動向を裏付けた。各社の業績は帖合変更の影響などもあるが、POSの動向では、郊外型や地域密着型の書店では堅調に売り上げが伸びたが、都心型の店舗は厳しい状況にある。それでも、全体として出版物は購入されたということだ。

 

 とりわけ売り上げがよかったのは、やはりコミックだ。いずれも前年同期比30%前後伸びている。なかでも『鬼滅の刃』が大きく貢献したという。しかし、コミック単行本がそれほど売れても、コミック週刊誌の売れ行きは伸びないらしい。出版科学研究所の月々の数字にも、週刊誌全体は金額・部数ともに2桁マイナスの月が散見される。

 

 一方で、書籍、雑誌ともに返品率が改善した。おかげで取次は大幅な経費削減を実現したわけだが、この間の新刊刊行が少なかったことも影響したという。出版活動が停滞したという面では、感染拡大のマイナスの影響とみることもできる。

 

 この時期、映像レンタルの市場も巣ごもり需要があったというが、春から夏にかけて多くの映画の公開が延期されるなどしたことから、これから年末年始にかけて映像ソフトの新作が出なくなるというから深刻だ。

 

 感染者数はかつてない高まりを見せており、年末年始に向けて先が見えない状況がしばらく続きそうだ。

【星野】