【行雲流水】文化通信2021年3月29日付

2021年3月29日

 某月某日

 今週も「こどものための100冊キャンペーン」への協力要請で彼方此方回っている。

 保育園児の父兄に届けたいと最初に訪ねたグローバルキッズ・中正雄一社長とは、東急時代沿線に展開した神戸屋の店舗開発担当として共に仕事した旧知の間柄。キャンペーンの趣旨にいたく賛同、親しい同業各社に繋いでくれる。4万人近い園児の父兄に、著名人とプロが選ぶ100冊を掲載するカタログをお届けできそうだ。

 図書館流通センターでは、全国の図書館に向けて選定図書のコーナー展開とともに近隣の参加書店の案内など呼びかけていただけることに。また書店再生支援財団からの協賛で、参加書店にご負担いただくカタログの費用を当初予定から減額できる見通しになるなど、支援の輪が広がっている。

 某月某日

 齢94となる母の誕生日を自宅で祝う。コロナ禍ゆえ東京で仕事する岡山の親戚夫婦とちびっこギャングには遠慮してもらい親子三人水入らず。接待が絶無となり苦戦する料亭「新ばし金田中」から、ささやかな救済の意もあり酒肴、焼き物・煮物、笹巻きと手毬寿司をテイクアウト。みっしり詰まった折詰はさながらお節のようで、ひとり冷酒で正月気分に浸る。

 11年前に暴れん坊の父を亡くしてこのかた、今が一番幸せよと、めでたくもあり・・・のひととき。

 某月某日

 ソニーミュージックエンターテイメント傘下でゲームやアニメの企画・制作会社、アニプレックス・岩上敦宏社長をランチ取材。「鬼滅の刃」のテレビアニメ化と、昨秋公開され映画史上空前大ヒットとなった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を企画した日本アニメのトップ・プロデューサーである。

 アニメや映画、さらにはグッズの販売など、「鬼滅」の経済効果はさぞかし・・・と思いきや、ソーシャルゲームがもたらす利益はそれらの比ではないと。どちらも無縁の昭和のオヤジには実感無し。

 新規事業として取り組み、6月に公開される初の実写映画「夏への扉」は、1956年に発表されたアメリカのタイムトラベル小説が原作で、日本では講談社と早川書房が翻訳版を発行している。

 こうした、小説やコミックスから映画やアニメといった「紙→映像」の先には、5Gなどデジタル環境の進化で「紙→VR・AR」への展望がみえる。もはや「未知なる世界」では済まされないか。

【文化通信社 社長 山口】