出版科学研究所が発表した2021年1~6月の出版販売額は紙が前年同期比4・2%増、電子が同24・1%増といずれも前年を上回った。紙は昨年4月に緊急事態宣言による書店休業が発生したマイナスの反動もあるだろうが、電子は相変わらず高い成長率だ。
占有率が大きい電子コミックが同25・9%増と大幅に伸びた一方で、文字もの電子書籍も同20・9%増と伸び率は大きい。コロナ禍による「巣ごもり需要」や電子図書館導入の増加などで利用が広がっているのだろう。
実際にコミックやライトノベルなどを出していない出版社からも、電子版の売れ行きが良いという声をよく聞くようになった。
本紙の電子書籍特集(9~12面に掲載)で紹介されている青弓社をはじめ、みすず書房や岩波書店といった出版社も電子書籍化を本格化していくという。
コミックは電子の世界で大きな市場になっているが、その分、国内外に競争相手も多い。しかし、専門書や教養書、児童書などの書籍は、まだ既存の出版社に一日の長があるのではないか。
もちろん市場が広がれば電子オリジナルコンテンツなど参入も増えるだろう。そんな中で紙から電子へ広がる可能性を切り開くために、人材投資をはじめとした取り組みを早める必要があるだろう。
【星野渉】