【出版時評】週刊誌の中吊り広告

2021年8月23日

 『週刊文春』と『週刊新潮』が電車の中吊り広告をやめるという。通勤などに電車を利用してきた人々にとってはひとつの楽しみにもなっていたが、ネットで瞬時に情報が拡散する時代の流れからは致し方ないことか。テレワークの普及なども影響しているのかもしれない。

 

 週刊誌は出版物のなかでも特にデジタル化の影響が顕著だ。出版科学研究所による年間推定販売部数は、ピークだった1995年(16億3473万部)に対して2020年は2億4257部と85%以上の減少。かつて4 0 0 0 億円を上回った年間推定販売金額は19年に1000億円を下回り昨年は913億円だ。

 

 一方で「文春オンライン」や「現代ビジネス」、「NEWSポストセブン」などのニュースが現実の政治や経済、芸能界などに影響を及ぼす。週刊誌が築き上げてきた取材網や調査報道の価値はいささかも減じていない。ネット社会という新しい環境で、この価値をいかに生かしていくのか、そしてお金にしていくのかが課題というのは、週刊誌を出してきた出版社に共通しているのだろう。

 

 風物詩であった週刊誌の中刷り広告が消えることに一抹の寂しさを覚えつつ、そういえば最近は車内ビジョンの動画広告やニュースばかり見ていたことに気づかされた。     

 

【星野渉】