講談社とアマゾンが直接取引を始めたというニュースが大きく報じられていた。メディアとしては、黒船(アマゾン)の圧力で長年続いた体制(取引・流通)が変わるという図式がドラマチックに映るのだろう。
かつての出版業界では「直接取引」はタブー視されていた。出版社・取次・書店の三者の関係は「三位一体」と呼ばれ、取次を経由する取引が「“正常”ルート」とすら言われた。書籍・雑誌の販売が三者共通の利益であり、この連環こそが出版産業の要であったからだ。
そうした雰囲気がはっきりと変わったのは、2014年の大阪屋経営破綻に始まる総合取次再編の動きだったように思う。盤石と思われていた「正常ルート」の破綻が誰の目にも明らかになった。
それから7年ほどしかたっていないが、もはや「三位一体」や「正常ルート」は遠い世界の言葉のように感じる。いまや「直接取引」も選択肢として語られるようになっており、取引や流通もそれを前提とした仕組みを考える時期に来ている。
乗り越えるべき障害が大きいほどドラマは面白くなる。そういう意味で出版業界では巨大な「取次」を批判することが正義に映ったり、「取次」を脅かすものが注目された。しかし、「直接取引」がニュースにならなくなる日も近いだろう。
【星野】