【行雲流水】文化通信2021年11月2日付

2021年11月2日

某月某日

 京都新聞社に大西祐資社長を訪ねる。小社発行の「新聞人・出版人」には「毛鉤釣り、茶道、文楽、ゴルフ」と、相当な趣味人である。デジタル化に注力し、京都の文化的価値を「京滋を超えて全国へ、世界へ」と意気込む。それならば、とジャパンタイムズ・末松弥奈子社長との縁結びを約す。

 辞した後、大阪に足を延ばし、創元社・矢部敬一社長との雑談が熱を帯びる。「同じことをするだけでは縮小するのみ」「できない理由ばかり語っていても殻は破れない」「返品率改善が利益率改善につながるという理屈より、取次、書店が持つ貴重な顧客情報の活用を連携して考えるべき」等々、この業界に3年半、幼児並み浅学菲才の小生、学び多き話に感謝。

某月某日

 「金田中」の女将・岡副徳子さんからの案内で、新橋演舞場にて2年半ぶりに「東をどり」を鑑賞。例年5月に催されるが、昨年今年と中止を余儀なくされ今回初めて映像での披露とした。果たして、舞台の大スクリーンいっぱいに映し出される料亭の座敷や庭で踊る新橋芸者、歌舞音曲は実に見事。フィナーレでは舞台が暗転、柝き の音を合図に芸者衆が勢揃いし、口上と踊りで大団円。苦境にある花柳界の矜持と心意気が胸に迫る。来月半ばから予定されているオンライン配信は必見である。

 もう一つのお楽しみは新橋の料亭、割烹5軒いずれかの松花堂弁当。帰宅して開けると「東京吉兆」の弁当が。鯛の昆布締めに加減酢が添えられた鯛昆布〆、八寸に和牛赤ワイン煮やサーモンの西京漬、炊き合わせには揚げ秋茄子煮、鶏肉の治部煮などで一献傾け、柴漬けと塩昆布で松茸ご飯。

某月某日

 オーナー系出版社の経営者6人で白河桃子さんを囲む。桃子女史、婚活ブームの火付け役で、今はワークライフバランス、働き方改革、ダイバーシティなどをテーマに活躍している。著書も多数。

 寿司と焼肉の話。10人のグループがあり、これからどこで食べようかと相談する。1人が寿司、他は焼肉の場合、寿司の主張は無視される。2人だと、「寿司もいいけど今日は焼肉にしよう」となる。3人になってはじめて「意見」となり寿司の選択について考える。つまり3割は「魔法の数字」、クリティカル・マスであり、意思決定に重要な影響を与える。だから、会議メンバーは女性を3割にするべし、という話なのだが。