昨年末に世界最大の書籍出版社ペンギンランダムハウスが、米国4位の同業であるサイモン&シュスターを買収するというニュースが、出版業界の世界的な再編を表す出来事として注目を集めたが、アメリカ司法省が待ったをかける訴訟を起こしたという。
ペンギンランダムハウスは、もともとペンギンとランダムハウスという、いずれも大手出版社が経営統合して誕生したが、アメリカの書籍業界は、同社を筆頭にした5つの出版グループが大きなシェアを持つ。
司法省が問題にしたのは、ただでさえ「ビッグ5」が支配力を持つ業界で、トップ企業がさらにシェアを高めることで、著者に支払う印税の競争が阻害されるという点だ。その結果、著者の創作意欲が落ち、出版物の多様性が失われると主張している。
売れる作家を獲得するために、アドバンスと呼ばれる前払い印税の引き上げ合戦が起きるアメリカならではと言えるが、そもそも寡占化している出版業界に対する不信感があるのだろう。
さらに、独立系書店が加盟する書店組合も、この決定を歓迎している。チェーン書店やネット書店を除けば、書店も出版社の寡占を歓迎していないのだ。その点、いまのところ日本は多くの独立系出版社が存在するが、業界再編を経てどのような姿に変わっていくのだろうか。
【星野渉】