【出版時評】デジタルビジネス黎明期の記録

2021年12月14日

 かつて紀伊國屋書店に在籍していた三浦勲氏の『データベースサービス業の誕生と展開』(出版メディアパル)を送っていただいた。

 

 1970年代のデータベースビジネス黎明期からインターネット時代にかけてこの事業を牽引してきた人しか知り得ない詳細な流れが記されている。

 

 当時は安価なパソコンもなく、コンピューターを導入している出版社や書店もほとんどなかったであろう。そんな時代に一書店としてデータベースサービスを手がけた三浦氏は、多くの困難を乗り越えながら事業を進めたようだ。

 

 いまや、デジタルネットワークは我々の仕事はもちろん、生活にも欠かせない存在になった。出社して最初にパソコンの電源を入れ、何か調べたいと思うとスマホを手にする。自動車や家電・風呂まで外から操作する時代だ。

 

 出版物を探すのもネットである。それも専用の検索サイトではなく、アマゾンなど通販サイトかグーグルだ。ここで見つからないと、この世に存在しないということになってしまう。そういう意味で、早期に本のデータベースを構築した功績は大きいだろう。

 

 そして、業界団体によって近刊を含めた書誌データ整備が進められ、流通改革の原動力になろうとしている。三浦氏がデータベースに着手してちょうど50年である。         

 

【星野渉】