某月某日
年賀状は文化であると思っている。私自身は毎年長々と駄文を弄したものを印刷して済ませている無精者だが、元旦の遅い朝、屠蘇を呑み、ぬる燗でお節を啄んだほろ酔いで、届いた賀状を一枚一枚眺めてくすっとしたり、ほほぅと感心したりする時間が好きだ。
小社は発信媒体があるのだからと、数年前にさらっと虚礼廃止にしたが、この年末年始は公私ともに、年賀挨拶の中止予告や「今年でラスト宣言」がいくつも届き、中には Facebook の友達登録を促すものもあった。SNSは確かに便利だが、煩わしいのが誕生日とこの時期。特に大晦日はとりどりの「今年もお世話に」系スタンプが着信しピコピコ。年が明けると「あけおめ・ことよろ」系でピコピコ。仕方なく、こちらからも一つしかないスヌーピーのスタンプで応酬する暫しの無限ループに。やはり紙の年賀状がいい。
某月某日
さて仕事始めである。午後の定例会議を終え2年ぶりに神田明神へ。境内は人、人、人。参拝まで15分ほども並んだか。財布を忘れ増田朋編集長からご縁(5円)の100倍を借りて投げ入れる。そういえばまだ返してないな…。
社に戻り恒例の小宴会。ウーバーイーツでヤンニョムチキンや海鮮チヂミ、豚足を取り寄せ、ビールとワインで乾杯する。年2回、到来物で抽選会をしているが、今回は数が足らず若い順に「お年玉」とする。某社周年記念品の高級織物は最若手の野中琢規がゲット。岩手の両親にプレゼントするとか。
〆は「味の手帖」の上條宏昌君が作るたオリジナル・スパイスカレー。同君は大阪あべの辻調理師専門学校出身で、フランス料理のプロを目指す生徒を教えていたから当然とはいえ、ウマい。コロナが落ち着いたら、カレーランチで情報交換会でもやりますか。
某月某日
本号発行日は不肖私64回目の誕生日である。もはやアラカンではなく、いよいよ「前期高齢者」、老境が視界に入る。今年は外食せず「吉兆」の松花堂弁当を持ち帰り、齢94の母に感謝する夜。
「日本史人物〈あの時、何歳?〉事典」(吉川弘文館)によれば、まさに今話題の、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で小池栄子演ずる北条政子が、承久の乱で鎌倉の御家人を統率し勝利したのが64歳。中曽根康弘が鈴木善幸内閣の後を受けて内閣総理大臣となったのも64歳。オレも頑張らねば。