【出版時評】出版の多様性支える倉庫業者の機能強化

2022年1月25日

 出版倉庫業の大村紙業が埼玉県春日部市に開設している庄和流通センターを訪れた。昨年11月に完成した新設倉庫をはじめ、1万4800坪の敷地(ほぼ東京ドーム1個分だそうだ)には在庫、出荷、返品仕分、改装、古紙化、さらにはPODの設備まで揃っている。

 

 同社は各所に分散していた営業所拠点を集約させるために同センターの整備を進めているが、出版流通の変化に対応するための設備増強でもある。

 

 アマゾンへの直接出荷を行ったり取次と在庫情報を共有するためのEDI、取次・書店以外のチャネルや個人書店などへの小口の宅配出荷、出版社と情報共有するためのWEBシステム、そして製造から出荷まで一貫して対応するPODサービスなど。

 

 一方で、出版物の流通量は減り続けている。雑誌はもとより、コミックスや書籍も程度の差こそあれ紙媒体の市場縮小は続いている。

 

 そんな中で時代に合わせた設備投資をしなければならないのだから、倉庫会社はシェアを広げるか、出版物流以外の稼ぎ口を見つけるといった、まさに取次や出版物輸送と同じ課題に直面している。

 

 それでも、機能強化している流通センターを見ていると、今後、小規模な出版活動や書店開業、そして出版物のチャネル多様化を支えるインフラにつながるように思われた。       

 

【星野渉】