【行雲流水】文化通信2022年2月1日付

2022年2月1日

某月某日

 程なくして齢95となる活字中毒の母より『世界100年カレンダー 少子高齢化する地球でこれから起きること』(河合雅司著・朝日新書)の購入指令があり、届ける前にナナメ読みする。

 移民を含め今後も人口が増加する米国が少子化著しい中国のそれを抜き、GDP世界一の座を譲るも再び逆転する「米中人口戦」。そして日本人はわずか200年後に現在の東京都の人口よりも少ない1026万人、300年後には大阪市並みの275万人、もはや絶滅危惧種である。さらに2900年には1000人、3000年にはついに0人と絶望的な予測値が続く。SF映画よろしく、優秀な遺伝子を体外受精させ量産する「生殖ビジネス」に国家として取り組む日が来るかもしれない。

 スウェーデンはほぼ日本と同じ面積で人口1000万人。単一言語だから、日本の活字業界の近未来像が見られるかもしれない。

某月某日

 詳細は本号の紹介記事に譲るが、スマイルズの遠山正道さんが、還暦の誕生日に合わせて新著『新種の老人とーやまの思考と暮らし』を上梓した。35歳から60歳まで25年間「味の手帖」で連載した300回、内200篇を収録。

 当時、三菱商事に在職していたからタイトルは「サラリーマンのさらり日記」。3年ほどで社内ベンチャーとして立ち上げた「スープストックトーキョー」の社長になって、「さらり日記」とした。連載当初は真っ当=普通でない筆致に戸惑い、赤字を入れることもあったが、すぐにやめた。タッチを尊重し放任した。

 改めて読み返すと実に面白い。差し障りがある?ゆえにカットされ残念なものもある。それにしても「異能」とか「奇才」という言葉がこれほど似合う人はいない。文章も生きざまも、奔放かつどこまでもアートなのである。

某月某日

 小社会長でもあった父、山口比呂志が亡くなって丸12年、13回忌を前に高尾の霊園に墓参り。

 年末に行けなかったので「ほんのきもちです」刊行など近況を報告する。選者をお願いした50人のほとんどは「味の手帖」の対談や連載、寄稿でご縁をいただいた方ばかり。今の私の有り様を想定していたわけではないだろうが、おかげさまでと、掌を合わせる。

 帰途、母のリクエストで「くら寿司」へ。肉厚のホタテと揚げたてサクサクのエビ天がウマい。