「1冊の本を売る本屋」というコンセプトで森岡書店を開業した森岡督行さんは、「海外とは違って政府の支援なしに書店が根付いている日本の現状を肯定して、気持ちのベースにしたほうがよい」と話した(1・2面インタビュー掲載)。
もちろん、彼が書店経営は楽だと考えているわけではなく、自身の体験としてその厳しさは十分に理解した上での発言である。 日本の書店数はこの20年余で半数以下に減った。それでも、国内の書店はまだ8000店程度はある。おそらく諸外国でこれに匹敵する国はほとんどないだろう。 また、フランスや中国、韓国などでは、税軽減など政府による書店支援策が実施されているという。うらやましくもあるが、逆に見ればそこまで書店が追い込まれているともいえる。
それでも、ドイツやアメリカ、フランスなどで書店を訪ねると、働いている人々は仕事に誇りを持ち、楽しんでいるように見える。海外からの来客にいいところを見せているのかもしれないが、泣き言は聞こえてこない。
おそらくそれは、厳しくても自ら本を選び仕入れて売っているからではないだろうか。森岡さんも、書店が本を買い切りで仕入れて売った例を挙げて、「書店の仕事にはすごく可能性がある」とも話している。
【星野渉】