【出版時評】巨大な新聞社と印刷会社の提携に注目

2022年7月5日

 読売新聞東京本社と大日本印刷(DNP)が「文字・活字文化の醸成」に向けた提携を発表した。新聞社と印刷会社はこれまでも近い関係にあったが、文字・活字の普及という大きなテーマでの提携は珍しい。

 

 読売新聞社は活字文化推進会議を立ち上げ、大学・高校・中学生のビブリオバトル大会を開催するなど、新聞づくりにとどまらない活動を行っており、DNPは印刷のみならず、出版流通改革に向けた取り組みで大手取次トーハンと提携もしている。そんな両社が「文字・活字」のために手を結ぶのも肯ける。

 

 提携内容は、読書のきっかけになる読売新聞の記事を、DNPが運営するハイブリッド書店やSNSで発信するなど、ネットに本や読者の情報を流していくことが中心になるようだ。

 

 いまコミック市場が史上最大規模に成長しているのは、マンガがネットで読まれるようになったからだ。電子化されたことで、大人の男性が少女コミックを読むなど、マンガは対象の年齢や性別、さらには国境まで超えている。

 

 文字・活字中心の出版物はネットで消費されにくいとはいえ、多くの人が触れるスマートフォンなどで気軽に接することができる環境を作ることは重要だ。世界最大級の新聞社と印刷会社による提携が、文字・活字が人々に浸透するきっかけを作るのか注目したい。     

 

【星野渉】