出版科学研究所によると、今年上半期の出版市場は前年同期比3・5%減と厳しい数字になった。年間の推定販売額は3年連続でプラスに転じていたが、このままいくと今年は落ち込みそうだ。電子は同8・5%増の2373億円と成長を続けているが、紙の書籍・雑誌が同7・5%減の5961億円。電子の伸びは続いているものの、伸びが1ケタ台にとどまり、まだ大きい紙の売り上げ減が電子の伸びを上回った。
今年は書店店頭の販売も厳しさが続いている。コロナ禍では特需が発生したが、いまはその前と比べても落ち込んでいるという。出版科学研究所は、コロナ特需の終息と、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格高騰や円安といった経済環境悪化によると分析しているが、はっきりとした原因はまだわからない。
出版物の需要がそれほど急激になくなるとは思えないが、もしかしたら、人々の生活様式の変容が、我々が思う以上の速度で進んでいる影響なのかもしれない。さらに、資源高に伴って用紙等の資材が一段と値上がりする。おそらく、コスト増は価格に転嫁せざるを得ないだろう。
流通サイドからの要請もあって、このところ価格を上げる流れができてきたとはいえ、これだけ市場が冷え込んでいる中で慎重になる出版社も増えそうだ。どのような工夫ができるのか。難しい局面を迎えた。
【星野渉】