本にICチップを付けることで、店頭での棚卸作業、万引き防止に役立てる取り組みは、かなり前から試行されてきたが、なかなか実現しなかった。それが、流通基盤が大きく変わりつつある中、大手出版社と丸紅が立ち上げたPubteXが来年、RFIDソリューション事業をリリースすると発表している。
バーコードと違って1冊ずつ個別に識別する個品管理が実現できれば、返品が発生し、長い間店頭で在庫される書籍であっても1冊ごと条件を変えたりできる。長年続いてきた取引制度を変える契機になるかもしれない。PubteXに出資する講談社は、特約書店会「書店未来研究会」が開く各地の会合で、今回の取り組みについて説明しているというが、RFIDに対する書店の期待は大きいようだ。
以前から万引き防止タグを書店が挿入することはあったし、代官山蔦屋書店では開店当初、独自にRFIDタグを書籍に挿入して管理することを試みた。しかし、こうした個々の書店では、負担が大きく続かない。そのため、生産段階で装着するソースタギングが求められてきた。
ただ、出版社にすればタグをつけても売れ行きが良くなるわけではない。倉庫の管理などコスト減が見込めるが、システム導入など費用もかかる。大手出版社の本気度でこのハードルを越えられるのか。流通改革にも関わるだけに注目だ。【星野渉】