電子出版を手掛けるボイジャーが創業30周年を迎え、創業者で取締役の萩野正昭さんと、鎌田純子社長にお話を聞く機会をいただいた。電子書籍の黎明期から「本」にこだわり続け、今や多くの電子書籍で採用される「ドットブック」を開発した同社だが、当初はなかなか理解を得られず苦労も多かったという。
1992年にアメリカのボイジャー社とのジョイントベンチャーで設立し、電子書籍制作ソフト「Expanded Book」ツールキット日本語版を発売したのが93年。大がかりな工程がある紙の本作りと違って、個人で出版できると注目された。
今でもデザイナーなどはマッキントッシュコンピュータ―を使っていたりするが、当時の電子出版やDTPはマックが主流で、ボイジャーも展示会「マックワールドジャパン」にブースを出し、エキスパンドブックで電子書籍を作った人々が集まった。
当時、萩野さんが「ここに集まってくるのは、もともと出版や物書きを目指していたけど叶わなかった人たちだ」と話していたのが印象に残っている。そういう人たちの夢を叶えるのがツールキットであり、電子出版だったのだ。
その後、ご存じのように電子出版は急激に変化したが、その中で同社が一定の地歩を固めて30周年を迎えることができたのは、「本」へのこだわりを持ち続けたからだったようだ。
【星野渉】