【出版時評】晴天の年明けだが

2023年1月17日

 大手取次が発表した年末年始の店頭販売動向は前年同期比割れとなった。ただ、トーハンによると、客単価は104・2%と伸びており、価格の上昇がある程度落ち込みを抑えたようだ。

 

 特に映画が大ヒットしている「SLAM DUNK(スラムダンク)」は、書籍扱いで定価1980円の新刊『THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE』(集英社)をはじめとして、既刊コミックスも大変な売れ行きだという。

 

 同作は著者の意向で電子版が出ていないため、単行本コミックスの売れ行きにつながった。一方で、『静かなるドン』(実業之日本社)は、連載終了から10年近くを経て、電子版が若い読者に受け入れられてベストセラーになった。

 

 紙版、電子版ともに売れ行きの良いコミックスだからこその現象だが、読者にとっては紙と電子それぞれの良さで選んでいるのであろう。その結果、コミック市場全体はかつてない規模になっている。端境期における出版物の可能性を示す例にも見える。

 

 今年は書店議連が最終報告を発表し、PubteXがRFID事業を開始する。そして、日本出版販売の「出版流通改革」の区切りとなり、トーハンの「REBORN」は最終年度に入る。業界改革の速度が環境変化を上回るのか。目を離せないことが多い年になる。

【星野渉】