茨城県を中心に複合書店を展開するブックエースは、TSUTAYAが提案する雑誌買切施策によって9割を超える売上率と、30%を超える粗利益率を実現している。同じ商品でも、書店の努力によって売れ方も利幅も変わり得るという事例である。
対象雑誌の発売から1カ月間の定価販売時に購入するお客と、それ以降の値引き時期に買うお客はほとんど重ならないという。鮮度が求められ、それほど高価ではない雑誌は、「欲しい」と思えば定価で買うが、安くなっているのを目にして買うこともあるということだ。
同社では2019年からこの施策に取り組んできたが、売れ行きや陳列方法などを本部が毎月チェックし、改善策を店舗に徹底するというPDCAを回し続けている。そのおかげで、各店の展開方法やオペレーションが標準化され、売り場の整理なども行き届いているようだ。
出版流通・販売では「マーケットイン」の必要性が指摘されているが、それは、お客に最も近い小売が、仕入れ、値付け、陳列など、販売全体に主体的に取り組んで市場を刺激し、「売る」ことであろう。ブックエースによると、雑誌買切施策に参加する出版社や雑誌数の伸びが止まっているという。
小売の努力と成果を業界全体で支えることができているのかが気になる。
【星野渉】