某月某日
毎年春秋恒例の墓参りツアー、昨秋都合がつかずこのタイミングで、両親の里、岡山4カ所を従兄の車で回り、翌朝、妻の母方の墓所がある京都へ。「ついで参り」ではなく、失礼ながら、書店2社を「ついで訪問」する。
ふたば書房・洞本昌哉社長を本社のある「ゼスト御池地下街」に訪ねる。京都市役所前駅に直結し、京都駅地下街「ポルタ」に次ぐ規模だが、10年ほど前までは売り上げ低迷で苦戦していた。アパレル系から飲食や最寄り品業態に入れ替えを進め、現在は回復基調にある。洞本さんによると、昨今、周辺に低層(=高額)の新築マンションが増加、主に首都圏から"終の棲家"として移住した比較的富裕な熟年層の書店利用が増えている。昨年末はコロナ前を上回り過去最高の売り上げとなった由。
15日に開催された、全国で通算89回目、京都では7回目となる「文学フリマ・京都」の話に。500を超える机一つのブースで、主に個人の出店者が自費出版の書籍や雑貨を販売。11時から5時間で昨年の2倍以上、2400余名が来場した。「活字マニアは全国にわんさかいてますよ」と。5月開催の東京会場に出店してみるかな…。
午後に訪問した大垣書店・大垣全央社長も「自費出版」に力を入れている。「完成した本が店頭に並ぶことがなにより客に喜ばれ、しかもウチにリスクはない」と。昨秋4点同時刊行した、自社企画の仕掛け絵本シリーズも好調らしい。出版事業の担当者は2名、売り上げ全体からみて、さして大きな数字ではないだろうが、こうした書店ならではの企画に注目したい。
某月某日
本号が発行される1月31日をもって、渋谷・東急百貨店本店が55年の歴史の幕を閉じる。駅から離れていて、人が少なく快適な地下食品売り場はよく利用していた。「屋上ビアガーデン」も穴場だった。飲み物・食べ物は持ち込み自由で、焼き台と調味料、食器一式が提供されるという、期間限定の企画は思い出深い。地下の売り場で牛カルビや鶏もも肉、トウモロコシにワインなどを買い込む、任期2年の"焼き奉行"であった。
同店7階で1100坪と、渋谷で最大の売り場面積を誇った「MARUZEN&ジュンク堂書店」もなくなる。3月には44年の歴史を誇る「八重洲ブックセンター」も閉店する。ふらりと入って想定外の出会いを楽しむ、"知恵と知識の森"がまたひとつ、消える。
【代表取締役・山口健】