【行雲流水】「The Bunka News」2023年2月28日付

2023年2月28日

 某月某日

 サステイナブルをテーマに活動するアーティスト・長坂真護さんに会う。高校卒業後、歌手になる夢を胸に秘め上京し、文化服装学院のアパレルデザイン科に入学。「コンテスト荒らし」と呼ばれるほどの才能が発現するが、ロンドン留学の支援が得られるファッションコンテストで惜しくも敗退。自費で留学するために新宿のホストクラブへ。3000万円を手にし、留学せず設立したアパレル会社は倒産、新宿の路上で美人画を描き糊口をしのぐ。その後、拳銃の銃口にコンドームを付ける(人をつくらない+人を殺める道具)メッセージアートで話題となる。

 2015年、パリの同時多発テロの現場で自身の浅はかな欲を自覚し、人気だった反戦画の絵筆を置く。翌年、平和の尊さを「満月」で表現するとともに、世界中の先進国から集まる電子機器を日当500円ほどで野焼きするガーナのスラム街の人々を目の当たりにし、電子ゴミなどを使ったアート作品の創作も始め、今日に至る。

 今や5億円以上を日本で販売するが、自身は5%だけ受け取り、納税後の利益で、防毒マスクを配り、現地に作ったリサイクル工場ではゴミをチップにしてブロック建材をつくり、EVバイクの開発も手掛ける。自社農園ではコーヒーやモリンガ茶の木も植えた。

 2030年までに1万人を雇用し、ガーナのスラム全世帯の生活の基盤を作りたいと語るマゴさん、38歳。毎年1000点"量産"する作品は、30万円から買える。

 某月某日

 日本紙パルプ商事・渡辺昭彦社長を訪問する。4月末に発行する『こどものための100冊』カタログへの支援をお願いすると、同時期開催のプレゼント企画「本を買って当てよう!」に景品として提供したいと、トイレットペーパーのギフトはがきを頂戴する。

 磁気紙や、アルミ箔、防水フィルムが付着する紙、クリップやホチキスが混入している機密文書は通常可燃ごみとして焼却されるが、同社の子会社・コアレックスは独自の技術で再生化し、リサイクル資源とした。その難再生古紙を60%含有し、ネット販売限定で工場直送とすることで、CO2削減率は53%になったという。

 マイクロエンボス加工で肌触りもソフト(らしい)な70m巻21ロールとティッシュ6個が送料込み3000円とは、価格も申し分ない。環境にもオシリにも財布にも優しいこの取り組みに、喝采を。

【代表取締役・山口健】