昨年来の用紙値上げによって、上げ幅の大きいものでは以前の倍になっている紙もあるという。これに伴い、出版物の価格も上昇している。出版科学研究所によると平均価格は書籍新刊が前年比0・8%増だった2020年に対して、21年は同2・8%増、22年は2・2%増、雑誌は20年が同0・3%増、21年が同2・4%増、22年が同3・6%増だ。
この結果、20年に平均1207円だった書籍新刊価格が1300円を超え、591円だった雑誌は600円台半ばという月が目立ち始めている。一方で、物価高の影響で消費者の財布のひもは固くなり、ますます売れ行きが悪くなるという悪循環だ。
新聞業界も今春から用紙値上げの波を受けている。今のところ、全国紙、県紙には値上げの動きはあまり見られないが、地域紙(ローカル紙)は相次いで値上げを発表。紙版を値上げして、電子版は据え置くという流れだ。
今回の物価高はロシアによるウクライナ侵攻がきっかけになっているが、今後、世界情勢が安定したとしても、用紙の価格が下がるとは考えにくい。
もともと日本の書籍価格は海外に比べて安く、出版流通と書店を支えるために上げる必要があると指摘されてきたが、想定外の要因で上げざるを得なくなっているといえる。このことが需要を減退させるのか、改革の原動力になるのか。
【星野渉】