【行雲流水】「The Bunka News」2023年4月11日付

2023年4月11日

 某月某日

 長編映画としてデビュー作の「PLAN75」が、カンヌ国際映画祭新人賞次点、芸術選奨など多くの新人賞や日本アカデミー賞優秀脚本賞など、様々の賞をさらい話題の早川千絵監督とお会いする。

 ストーリーは、満75歳になると安楽死を選択できる制度「PLAN75」の実施が国会で可決し施行されるという、誰しもが身につまされる近未来の創作。構想段階から主演に決めていた倍賞千恵子さんが、78歳の孤独な老人を巧みに演じ、光を放つ。アドリブもあり、ほぼ一発OKだったらしい。

 音や映像編集の仕上げをパリで行うことでフランス政府から助成され、国際共同制作として20か国以上で公開される広がりも出た。映画業界全体が潤う、文化大国ならではの仕掛けである。わが国のセンセイたちにも掛け声ばかりでなく頑張ってほしいものだ。

 某月某日

 札幌周辺であいさつ回りを済ませ、倶知安へ足を延ばす。東急不動産が運営する「ホテルニセコアルペン」の最後を見届けてほしいと、若かりし東急時代、北米のスキーリゾート調査に一緒した同社OBからの嬉しいお誘いである。

 白馬がホームゆえに、かれこれ20年ぶりのニセコはNISEKOに変貌していた。シーズンも終盤でパウダースノーが目当ての外国人は少なくなったとはいえ、ゲレンデのレストハウスで日本語は聞こえてこない。ハンバーガーとビールを食べ終え「パークハイアット・ニセコHANAZONO」を覗いてみると、様々な国の富裕層が国籍不明の従業員によるサーヴで優雅にランチを楽しんでいる。

 羊蹄山を真正面に捉えた「ニセコひらふ」のダイナミックなバーンを昭和のスキーヤー(私)はクリスチャニア(死語?)で軽快に滑走。当然、テーマ曲はトニーザイラーの「白銀は招くよ」である。しかし、愉しい時間は短かった。午後、重くなった雪に板を取られてつんのめり、左ふくらはぎの肉離れにより戦線離脱、軸足はアフタースキーに。足を引きずり行くジンギスカン店や居酒屋などは何処も満席⋮隔世の感あり。

 某月某日

 新年度がスタートする。昨年7月に就任した星野渉社長が初めて"施政方針演説"をぶつ。在職まる5年となった私も一言。

 夕刻、デパ地下で求めた総菜で「新年度決起飲み会」。転居祝で頂戴した「久保田 千壽」一升を星野と山口高範が呑むこと、水の如し。