【出版時評】大人も絵本を手に取ってほしい

2023年4月18日

 当社の「こどものための100冊」キャンペーンを4月29日から始めるのを前に、本号でノンフィクション作家・柳田邦男さんのインタビューを掲載した。硬派のジャーナリストとして知られる柳田さんだが、近年は絵本を普及させることに熱心に取り組む。

 

 戦中戦後の困難な時期、しかも父親や兄弟を亡くすという経験を経ながら、本を読み続けたことが、その後の取材者、発言者としての基礎を作ったのであろう。その言葉からは、いまの子どもや若者たちにその大切さを伝えようとする情熱が伝わってくる。

 

 柳田さんは、人と絵本とは3回の出会いがあると話す。幼少期に親に読んでもらう。次は自分が親になって子供に読み聞かせる。そして高齢になって改めて読み直す。

 

 確かに、幼いころに読んでもらったり自分で読んだ絵本の印象は強烈に残っているが、大人になって読むとずいぶん違っていたりする。小さい頃は自由に想像を膨らませていたようにも感じる。さらに将来再び読んだらどんな印象なのか楽しみでもある。

 

 「こどものための100冊」の冊子に掲載された本を見ていると、思わず手に取りたくなる。冊子はキャンペーン参加書店などで配布するので、ぜひ手に取って掲載図書を読んでみてほしい。最近は大人向け絵本も多いが、そもそも絵本は子どもの独占物ではないはずだ。

 

【星野渉】