日販グループホールディングスの吉川英作社長と初めてお会いしたのは、トリプルウィン推進部部長だった頃。部屋の雰囲気は"取次"っぽくない感じがした記憶がある。wwwとかSCMなど横文字が多かったからかもしれない。このほど日販GHDの専務に就任した富樫建さんが係長で座っていた。
当時すでに書籍専門取次の鈴木書店が経営破綻するなど「出版不況」といわれていた。業界会合のあいさつで「抜本的な改革」「制度の見直し」といった言葉が繰り返されてはいたが、業界全体にいまほど強い危機感は感じられなかった。
当時の日販・菅徹夫社長は、世界最先端の近代的な出版流通センターといわれた王子流通センターを手掛けるなど、物流やシステムに明るく、そのころの「取次」トップとしては異色だったように思う。
本号に掲載したインタビューで吉川社長がいうように、同社がトリプルウィン・プロジェクトで目指したことは、いまも色あせていない。2002年度の日販懇話会で菅氏は「SCM成功のカギは、情報を活用するノウハウを得ること、出版社、取次がいかにマーケットイン志向に立てるかどうか」と述べた。
その後環境は激変し、否が応でも変わらざるを得ない状況になっている。目指すべき方向はずいぶん前から見えていたのだから、思い切って踏み込みたいものだ。
【星野渉】