出版科学研究所がこれまで紙で発行してきた『出版月報』を『季刊出版指標』に発行形態を変え、毎月の情報はPDFの「出版指標マンスリーレポート」として発行を開始した。毎月はデータを中心として、季刊で特集などを掲載するスタイルは、理にかなっているように思える。
同研究所は公益社団法人全国出版協会の機関として大手総合取次トーハンの社内にある。出版物の販売状況などのデータを1950年代から継続的に保持しており、日本の出版産業をみるうえで欠かせない存在である。
今後、ロビー活動など、業界外への働きかけを強めるのであれば、政府や多くの国民を納得させるエビデンスを提供するシンクタンクの存在は、さらに重要になる。その客観性とともに、調査・分析・発信の能力を拡充することも必要だろう。 「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)は、近く最終報告をとりまとめるが、その中であげられる韓国では、出版業界の働きかけもあって政府によるさまざまな出版政策が実施されている。
韓国の書籍出版社を代表する大韓出版文化協会は、かつて一度廃止した出版研究所を、ロビー活動などのために復活させていた。やはり外に訴えていく根拠が必要なためだ。出版科学研究所には、これまで以上の発信力を期待したい。
【星野渉】