【出版時評】注目される韓国の出版・書店事情

2023年5月16日

 しばらく政治的にはぎくしゃくしていた韓国との関係が改善の方向にあるようだ。ドラマや音楽、文学、マンガなどエンターテインメントでは以前に増して交流が盛んになっている両国なので、いずれにしても関係は深まっていくだろう。

 

 そんな韓国の出版業界について興味関心が高まっている。書店議連では政策提言に当たって韓国の出版・書店政策を例に挙げ、事務局のJPICは4月終わりに同国の書店や図書館、政府機関などを訪問した。

 

 韓国ではかつて、書籍流通を中小規模の取次が担っており、手形取引が多かったことなどから、通貨危機の時期に取次の破綻で多くの出版社が連鎖倒産する事態が発生。また、書籍の価格拘束制度はあったものの、ネット販売だけ値引きが認められて書店の経営を脅かした。

 

 韓国の出版業界はヨーロッパやアメリカ、日本を含めた海外の情報も集め、政府にも働きかけて様々な施策を実現してきた。

 

 そんな施策の効果もあって、減少していた書店数は、伝統的な書店に代わって個人書店や地域住民による協同組合書店など創業が増え、全体として増加に転じているという。本号に白源根氏が寄稿している「ソウル通信」の文在寅前大統領が書店を開いたという話も、同国で書店のプレゼンスを上げている様子がうかがわれる。

 

【星野渉】