【出版時評】書店に必要なのは「仕入れ力」

2023年6月20日

 このところ、比較的規模が大きい書店法人の取引変更の話をよく聞く。出版業界ではメインの取引取次が1社である「1本帳合」の書店が多い。書店側がこの取引取次を変更する「帳合変更」は、特に大手書店の場合、大きなニュースとして扱われてきた。

 

 「帳合変更」には、それぞれ取引条件や出店政策など、いろいろな理由がある。書店も取次もお互い商売である以上、当然起こりうる。先日、当社セミナーで大手書店チェーンの担当者は、理由に「物流」をあげた。チェーンで仕入れた商品を保管し、店舗に配送する機能を期待しているのだろう。

 

 「一本帳合」が多かったのは、取次が仕入れから保管、配送、支払いなど多くの業務を担ってきたからだ。ただ、書店にとって効率は良いが、条件交渉して仕入れる姿勢を持ちにくいという面もある。

 

 イギリスやアメリカで大手書店を立て直しているといわれるジェームズ・ドーント氏の戦略は、大手チェーンの(出版社から良い条件を引き出す)仕入れ力を生かし、店舗は「独立系書店化」するというものだ。

 

 ややもすると「独立系書店化=地域密着」ばかりに目が行きがちだが、「仕入れ力」が伴わなければ商売にならない。日本の書店に欠けてきたのはむしろ「仕入れ力」であろう。「帳合変更」はそれを求める動きなのかもしれない。       

 

【星野渉】