【行雲流水】「The Bunka News」2023年7月11日付

2023年7月11日

 某月某日

 伊藤雅俊さんのお別れ会に。

 長男・裕久氏は大学の同じゼミ出身で、東急の新人時代には"修行"で在籍されていたから、ダブルで先輩。次男の順朗氏とは同年。夫婦ともに親しくしている関係で早い時間にご案内いただいた。

 小さな洋品店だった「羊華堂」を日本一の小売業グループに育てた稀代の経営者として尊敬していた。著書「商いの道」と、松下幸之助氏の「道をひらく」(共にPHP研究所)の2冊を座右の書として折に触れて紐解いたことである。

 曰く「怖くても冒険心を持とう」として取り組んだコンビニ事業で結果として会社は巨大になったが、根底には、「『成長』より『生存』を考える」ことが原点にあった。

 会場に掲示された言葉の中に「いちばん大切なのは、謙虚さであり、誠実さであり、真摯であることです」とある。今後も自らに問いかけ、省みて、反芻したい。

 某月某日

 新宿の都庁に、小池百合子知事をゲストに迎えた「味の手帖」巻頭対談の掲載号を持参がてら、福崎宏志政策企画局次長を訪問する。対談に同席した福崎次長の尽力で、来春卒業する都立高校生約4万人に、小社発行の「先輩の本棚」を配布、小池知事には選者としても参画してもらえることに深謝。

 これまでムック本形式で3万部ほど発行していたが、来年版については「こどものための100冊」と同じスタイルで10万部以上の発行を目指す。各地の高校卒業生のほか、千代田・中央・港区など首都圏の自治体で年明けに開催される(「成人式」改め)「二十歳の集い」での配布依頼を進めている。

 本を読む楽しさを知った若者たちが、将来子育て世代になった折に、今度は「こどものための100冊」を手にする(その逆もある)まで継続したいものである。

 某月某日

 真鶴道路ができて以降、素通りされていた過疎の町、真鶴が最近アツいらしい、と聞き、熱海で毎週末釣りに勤しむポン友夫婦と、酒が飲めぬ妻の運転で初訪する。

 事前に30分刻みで予約枠を確保する「ワイン・ラバーズ・ファクトリー」で、偏愛系女性店主が薦めるマニアックな白・赤・オレンジワインを購入。続いて海辺の「海女屋」へ。岡山の生ガキ、千葉の大浅利、蛤、鯖干物、練り物などを焼いて、自宅から持参したそれなりのワインで楽しむ。締めは魚介出汁のお粥。なるほど、県外からの若者たちで賑わっている。

 

【代表取締役・山口健】