【出版時評】2度の未曽有の危機で始まった「読書週間」

2023年7月24日

 当社主催の「第3回活字文化フォーラム」は、活字文化議員連盟の上川洋子会長と文字・活字文化推進機構の山口寿一理事長の対談を行った。デジタル革命によって文字活字メディアとその産業が大きな影響を受ける中、今後をどう考え、何をすべきなのか、限られた時間ながら濃密な話を伺うことができた。

 

 この中で山口理事長は、「読書週間」について言及。100年前の1923年に発生した関東大震災の翌年にスタートし、戦時下の中断を経て、1947年から現在の「読書週間」が始まったという。山口理事長は、大震災と戦災という、未曽有の危機の直後にこうした運動が開始されたことに、現在のデジタル化による環境変化をなぞらえ、新聞、出版業界が一致して危機への対応に当たるべきだと指摘した。

 

 「読書週間」を主宰する読書推進運動協議会のサイトでも、「読書週間」の第1回は1947年とある。震災直後に運動の前身が始まったことを知る出版業界人は、いまや少ないのではないか。と思ってググると、同協議会がまとめた記念冊子に寄せた布川角左衛門氏の「読書週間十年の回想」というこの間の経緯を詳細に記した文章が見つかった。

 

 文字・活字の3度目目の危機を受けてスタートした「BOOK MEETS NEXT」も、定着していくことを期待したい。【星野渉】