成長する電子市場と書店での出会い
KADOKAWAグループで電子書籍の取次事業などを行っている株式会社ブックウォーカーの栗本直彦氏が、当社のオンラインセミナーに登壇し、電子書籍の海外配信について話したが、アメリカでは日本のマンガを中心としたコミック市場が急成長しているらしい。それも紙版が多いという。
アメリカでは書籍市場91億ドルに対して電子書籍は約11%、オーディオブックが約9%。日本マンガがけん引するコミック・グラフィックノベル市場は2020年から翌年にかけて60%以上成長し20億7500万ドル(約2800億円)。そのうち電子版は約8%程度だそうだ。
この数字をみると、日本の電子出版市場、とりわけ電子コミック市場がいかに巨大なのかがわかる。コンテンツとしてのマンガの力だといえばそれまでだが、紙の市場でも重要なジャンルであるコミックで、電子化がここまで進むことによる影響はどうなのだろうか。電子と紙の相乗効果があるのか、紙版の需要を奪うのか。未経験の領域に入っているだけに気になる。
一方で、書店のコミック売り場でかつてのような立ち読みの人だかりを目にすることはなくなった。店頭で作品と出合う楽しみを経験せずに育つ読者が増える中、もう一度、店頭に人々を引き寄せることはできないかと思う。【星野渉】