流通の仕組みとしてPODを生かせるか
トーハンと大日本印刷(DNP)は、トーハン桶川センターへの書籍製造ライン導入に向けた協議を始めると発表した。実現すれば国内初の本格的な書籍流通センターでのプリント・オンデマンド(POD)導入となる。
PODは版面データから1冊単位で書籍を制作するため、注文があった書籍をその場で作って出荷できる。在庫を持たなくてもよく、出版社の倉庫などから調達する必要もないので時間もコストも抑えられる。
すでに大手出版社や出版倉庫会社、大手ネット書店などの流通センターでPODの導入が進んでいるが、大手総合取次の流通センターでは初となる。
書籍流通の先進国と言われるドイツの書籍流通会社リブリ社は、ヨーロッパ最大のPOD会社を傘下に持ち、2021年には書籍流通センターにPOD設備を併設して「Libri PLUREOS」を始動。500万タイトルの書籍を国内外の書店に即日配送可能にするという。
PODのデマンド=需要に応じた製造は、むしろ流通の仕組みである。需要が集まる場所に適している。世界最大のPOD会社の親会社もアメリカの書籍流通会社だ。
かつて日本でも大手取次両社がPODに挑んだが、製造技術ととらえられ、書籍供給手段としては大成しなかった。今回は流通の仕組みとして成功してほしい。【星野渉】