今夏は酷暑が続いたが、時期になれば彼岸花やコスモスが花開き、稲が頭を垂れる。改めて自然の強さを感じる◆台風一過の翌朝に畑の様子を見に行った。ふと空を見上げると視界全体がオレンジ色に光り輝き、絹を引いたようなグラデーションに目を奪われた。振り返ると、山から山へ、虹の全景が見える。しかも二重に。首が痛くなるまで時を忘れた◆ある早朝、畑でナスの枝に鋏を入れていると、背後でかさかさ音がする。振り返ると、隣のネットに鹿が引っかかっている。大きさからまだ子どものようで、逃がしてやろうと試みる。足に絡んだ紐は外れたが、体に巻き付いた紐がきつい。少し緩むと逃げようと暴れ出して元の木阿弥に。地主さんから市役所に連絡してもらった。ところが、担当部署の人が来た頃には死んでいたそうだ。もう少し何かできたことがあったのではと、鹿の体の思わぬ熱さを思い返した。【櫻井俊宏】