書籍の価格上昇とバーゲンブック
出版流通の変化や諸物価高騰に対応するため、これまで低く抑えられてきた書籍の価格を上げなければならないが、価格が上昇しても売り上げが減ると、値上げの効果が薄れてしまう。しかも購入者が「高い」と感じれば、買い控えを招きかねない。このバランスが難しい。
日本の書籍は諸外国と比較して価格が安いとはいえ、その環境に慣れている人々からは「安い」と評価されにくい。アンケートをすれば「高い」という答えも多い。原因の一つに価格拘束があるかもしれない。小売店で値引きがあれば、安いと実感できるが、値引きがないと、たとえ原価率が高いとしても、お客にはわからない。
ドイツでは日本より厳しい価格拘束を実施しているが、書店が路面のワゴンなどで書籍のバーゲンコーナーを設けている。ここで販売されているのは、出版社が在庫商品の価格拘束を外して低正味で卸すリメインダーと呼ばれる商品だ。同国にはリメインダーの大型専門店もある。日本に比べて書籍の価格がかなり高いドイツだが、リメインダーが書籍市場の8%程度を占めているという話を聞いた。
日本でもバーゲンブックは存在し、専門卸の八木書店などが扱っている。書籍価格が上昇する中で、こうした商品を活用してバランスをとることも必要ではないだろうか。【星野渉】