ちょっといい近所の居酒屋と書店
ことし7月末で閉店した名古屋のちくさ正文館書店で長年店長を務めた古田一晴氏に「感謝を伝える会」が、11月17日に出版クラブで開かれた。会場には人文・社会科学系の出版社などから50名ほどが集まった。
すると同じ日に東京・阿佐ヶ谷の書楽が、1月8日で閉店するという貼り紙を掲示したという話が入ってきた。阿佐ヶ谷には以前、書原の本店もあったが6年程前にビルの取り壊しで退店しており、阿佐ヶ谷から新刊書店がなくなってしまった。いずれも品揃えで勝負してきた名物書店だった。
書楽はJR中央線で2駅隣の西荻窪駅近くで営業している居酒屋戎が営む書店だ。居酒屋と書店の取り合わせは珍しいが、戎は1人で来店する地元客が多く、大きなカウンター席では本を読みながら一杯やっている人も見かける「ちょっといい」居酒屋だ。
かつて中央線沿線の駅周辺は、比較的多くのユニークな独立系書店があることで知られてきた。しかし、試しにグーグルマップで各駅周辺を調べると、西荻窪の今野書店、吉祥寺のBOOKSルーエ、西国分寺のBOOKS隆文堂、国立の増田書店、豊田の黒田書店など、あっても1駅に1書店という感じだ。
それでも他の地域に比べると多いのかもしれないが、近所の「いい本屋」は、「ちょっといい」居酒屋と同じようにありがたい存在だ。【星野渉】