【出版時評】2024年1月16日付

2024年1月15日

「甲辰」波乱の幕開け

 

 今年は新年会の多くが本格的に開催され、昨年までに比べて参加する人々も増えているように見える。一方で、新年早々の大災害で、こうした会合のあいさつも、復興を祈念する言葉で始まる。そんな中で、10日に開かれた書店新風会新年懇親会で、高岡市の文苑堂書店・吉岡幸治社長にお会いできたのはうれしい出来事だった。

 

 文苑堂書店は震災で商品が散乱したり、スプリンクラーが作動した店舗もあるなど、年初から営業できない状態になったが、書店新風会の有志や有隣堂・松信健太郎社長など書店仲間の応援もあり、8日で全店舗の営業を開始できたという。ただ、北陸には他で多くの書店が被災し、なかには倒壊した店もあると聞く。早く日常を取り戻していただくことをお祈りする。

 

 日本出版販売とトーハンが発表した年末年始の書店店頭売り上げ動向をみると、年末はほぼ前年並みだったが、年始は大きく落ち込んだ。震災の影響なのだろうか。今後の推移が気にかかる。

 

 今年の干支は「甲辰(きのえたつ)」。「甲」は物事の始まり、「辰年」は動きが盛んになるというそうだ。60年前は東京オリンピックが開かれ、新幹線が開業した年だ。いまの日本は少子高齢化、デフレ経済など、当時とはまったく違うが、こと出版業界は新たな枠組みを作る胎動が激しくなっている。先が見通せる年にしたい。【星野渉】