【出版時評】2024年2月6日付

2024年2月5日

 TikTokなどで小説を紹介するけんごさんが、当社のセミナーで本のプロモーションについて語ったが、若者が本を読むきっかけについてヒントが多くあった。彼の動画を視聴する人々の属性は10~20代前半の女性が多い。そうした視聴者が動画を見て「はじめて本屋さんに行った」というコメントも多いことから、この世代の女性は潜在的に小説に興味を持っていると話した。

 

 しかも、必ずしもライトノベルや投稿小説など若い世代向けの作品に限らず、『アルジャーノンに花束を』(早川書房)も紹介すると大きな反響を呼ぶ。既刊発掘のきっかけにできるのではないか。ステマ規制が強くなり、出版社から依頼された紹介などには「PR」といった表示をするが、視聴する若者は内容と属性が合った人物の投稿であれば、PRに嫌悪感を持たないとも話した。

 

 けんごさんは小説を紹介するときに、著者名、出版社名、受賞歴、発行部数などは入れない。そもそも本を読まない人々には通じない「余計な情報」で、物語を紹介し興味を持ってもらうことに集中するためだ。いまやベストセラーの発信源となるSNS。けんごさんは「SNSのプロモーションは本に興味がない人に視点を合わせるべき」と指摘。本を読まない人々を本に向かわせる有効なツールを活用すべきだろう。【星野渉】