【出版時評】2024年3月5日付

2024年3月4日

 

コミックのデジタルシフト進む

 

 出版科学研究所によると、2023年のコミック市場は紙と電子を合わせると前年比2・5%増の6937億円と史上最大規模を更新した。このうち約7割を電子コミックが占めており、コロナ以降にデジタルシフトが一層進みつつあるようにも見える。

 

 かつて同調査でコミック市場が最大だった1995年は5864億円。コミックス2507億円に対して、コミック誌3357億円と、雑誌が単行本を大きく上回っていた。たしか『週刊少年ジャンプ』が最大部数だったころだ。

 

 調査に電子を加えた2014年の電子コミックは887億円。いまや4830億円となり、ほぼ10年で市場は5倍以上拡大した。コロナ禍に見舞われた19、20、21年は巣籠需要が発生し、コミックスがプラスに転じたが、22年は前年比16%減、そして23年は8・2%減とコロナ以前よりマイナス幅は広がる傾向にある。

 

 コミック市場に占める電子コミックの比率は、14年の約20%が、19年に5割を超え、23年は69・6%に達している。かつてコミックスを大きく引き離していたコミック誌は、497億円と市場の7%を占めるに過ぎなくなっている。

 

 コミックは電子化によって、国内外で市場を広げる強力なコンテンツになった。一方でデジタルシフトの進行は、出版流通にさらなる重荷となる。市場変化への対応が急がれる。【星野渉】