【出版時評】2024年4月2日付

2024年4月1日

麻布台ヒルズで見える書店の可能性

 

 昨年11月24日に開店して注目を集めている大垣書店麻布台ヒルズ店について、赤井良隆店長と大垣交右副店長に弊社セミナーで話してもらった。オフィス、住宅、ホテル、高級ブランドショップをはじめとした商業施設などが集まる立地で、これまでにない体験があるという。

 

 麻布台ヒルズは森ビルが東京都港区で開発する敷地面積約6万3900平方メートル、延床面積約86万1500平方メートルに及ぶコンパクトシティ。大垣書店はヒルズタワープラザ4階に約300坪で出店した。

 

 書籍・雑誌の陳列とともに、ギャラリースペースやお酒も出すカフェ、読書スペースなどを備えた店舗で、著者の講演会やサイン会、ワークショップ、クラフト制作など多くのイベントを行っている。デベロッパー側も、取り扱う出版物の多様性を生かしたイベントに期待を示しており、閉店後の店舗で夜間開催することにも積極的だという。

 

 児童書が知育玩具も含めると売り上げの25%と、赤井店長も予想しなかった比率に。また、高額商品、出版物以外の陶器などの売れ行きも良い。決済の7~9割がキャッシュレスというのも赤井店長は未経験だという。大垣副店長は書店業について「粗利益を別にすれば大きな可能性がある」と手応えを話し、可能性と収益のバランスをとるのが課題だと述べた。【星野渉】