【出版時評】2024年6月18日付

2024年6月17日

業界団体の大きな役割

 

 経済産業省が開いた2回目の車座ヒアリングには、齋藤健経済産業大臣のほか、上川陽子外務大臣、盛山正仁文部科学大臣の閣僚3人が参加した。上川大臣は活字文化議員連盟の会長であり、昨年当社が開いた活字文化フォーラムに登壇し、神保町をはじめとした書店の重要性を強調した。

 

 今回出席した作家の今村翔吾氏は、「書店弱者は若者」など自ら書店を経営することで得た知見を示す一方で、国の支援はあくまで「後押し」であり、業界が自ら業界構造を変える必要があることを「肝に銘じなければならない」と強調した。

 

 その言葉に、思わず「その通り」と膝を打った。いくら外から支援したくても、自らが変わる意思と戦略を持っていなければ、手の施しようがない。国が支援を表明しているのは、自ら改革を進めるチャンスととらえたい。

 

 その場合に受け皿となるのが業界団体だ。一企業の取り組みなどを国が支援することは難しい。業界全体の改革に向けた動きでなければならない。そのための施策を作り、推進していくのが業界団体の役割であろう。

 

 経産省は今夏、「文化創造産業課(クリエイティブ産業課)」を新設する。文化産業支援を一過性にしないためであろう。ならば、業界団体側も今後も見据えて継続していける体制を整えなければならないだろう。【星野渉】