【出版時評】2024年7月9日付

2024年7月8日

書店のネット販売に可能性

 

 丸善ジュンク堂書店が店頭在庫のネット検索と取り置きサービスを再開した。同書店が属する大日本印刷が、ハイブリッド型総合書店サービス「honto」の「本の通販ストア」サービスを終了したことで、店頭在庫検索もできなくなっていたが、結構な売上があったのだという。

 

 このサービスは、欲しい本を検索して取り置きを頼むと、在庫を確認してメールを送ってくれる。すぐに手に入れたい本がある場合など、ネット通販より便利だ。

 

 出版文化産業振興財団(JPIC)とカーリル、版元ドットコムが、ネットで書店の在庫を検索できる「書店在庫情報システム」の実証実験を始めたが、多くの人がネットで本を探す時代、リアル店舗の在庫が検索出来れば一定の需要はありそうだ。

 

 すでにいくつもの書店が楽天や、アマゾンに出店する形でネット通販を行い、ある程度の売上を確保している書店もあるという。

 

 さらに、店頭に在庫がない商品も取り寄せられれば、利便性はより高まる。コロナ禍で休業を余儀なくされたアメリカやドイツの独立系書店で、ネット通販が売上の30%を占めるまでに拡大したのは、取次会社が中小書店のネット通販を支援する仕組みを提供していたおかげだ。書店支援について議論されているが、書店のサービス向上に向けた取り組みがまだありそうだ。【星野渉】