【出版時評】2024年7月23日付

2024年7月22日

 

表現規制より武器の禁止を

 

 大統領候補のトランプ氏が演説中に銃撃された。何発もの銃声が聞こえ、血を流すトランプ氏の姿も動画で流れるショッキングな事件だ。大統領選や世界情勢への影響も気になるが、普通に銃を持てる社会の恐ろしさを感じる。

 

 使われたのは狩猟などを目的とした銃ではなく、アサルトライフルと呼ばれる戦闘のための武器だという。トランプ氏は負傷で済んだが、聴衆が巻き添えで亡くなった。こんな武器を犯人の父親が〝合法的〟に所有できるというのだから驚かされる。

 

 日本で銃を見ることはほとんどない。私自身、これまでの人生で本物の銃に触ったことはもちろん、直接見た記憶も、博物館に展示されている火縄銃ぐらいだ。

 

 表現の世界になると逆転する。日本のマンガはアメリカをはじめとした海外でしばしば年齢制限に引っかかる。性的表現もあるが暴力表現にも厳しい。日本の名作時代マンガが他国で18歳以上に指定されていた。おそらくリアル(?)な斬り合い場面が残虐だとされたのであろう。

 

 日本でも目を覆いたくなる事件は少なくない。元首長が手製銃で殺害される事件も起きた。人間の本性は変わらないのだろうが、武器を容易に入手できるか否かで結果は大きく変わる。表現を規制するよりも、武器をなくす方が、明らかに事件の被害を小さくできるように思う。【星野渉】